電車内 カップルの口論に皆がほほ笑んだ理由

ある土曜日の夜、仕事帰りに電車に乗った際、前の座席
に座っていた20代前半と思われる男女が口論していまし
た。彼らは同じ店舗でアルバイトをしているカップルの
ようでした。女性(A子さん)は、
「今日、お店でこんなことがあったの!ひどくない?
ひどくない?」と男性(B男さん)に話しかけています。
B男さんはA子さんの話を最後まで聞いた後、その出
来事について、
「Cさんはどう思ったのだろうか?」
「Dさんはこう考えたのではないか?」
「Eさんの立場からすると、そう言うのは仕方なかった
のではないか?」と、異なる立場の人々の視点を考慮
しながら、丁寧にA子さんを諭していきます。
共感や慰めを求めて必死なA子さんは、徐々に、興奮し
ていきましたがそれでもB男さんは、A子さんの主張に
耳を傾けながら、
「こう考えてみてはどうか」と対話を続けました。
B男さんの話し方は非常に丁寧で優しく、反論してい
るものの攻撃的ではありません。
次第にA子さんもB男さんの意見に耳を傾けるようになり、
最終的には
「本当にそうかもしれない…。確かに私も悪かったのか
も・・・。B男に言われて私、反省したよ」
ととても素直な様子で応えました。

静かな電車内、周囲の乗客(なぜか女性客が多かった)は、
スマートフォンに目を向けていますが、二人の会話は確実
に耳に入っていいます。

そして、B男さんはこう続けました。
「俺は、A子が店の皆に好かれていてほしいの。だって、
A子が他の誰よりも大切だから」と。

周囲の女性客たちを見ると、皆、スマートフォンに視線を
落としたまま微笑んでおり、拍手が起こっても不思議では
ないくらい、その場は温かい雰囲気に包まれました。

B男さんの話し方は、どこかで習った会話術でも訓練され
たものではないと思います。ただただA子さんを大切に想
い、「職場でA子さんに楽しく働いてほしい」
という思いを、根気強く丁寧に伝えていただけなのです。

家族、友人、職場・・・。
あらゆる人との対話において、とても大切なことを教えて
もらったように思います。